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日別アーカイブ: 2026年1月23日

北村建築のよもやま話~耐震・制震リフォーム:優先度と費用対効果~

皆さんこんにちは!

有限会社北村建築の更新担当の中西です。

 

1. まず現況を“見える化”する
• 建築年×地域:1981年(新耐震)/2000年(N値計算・接合金物強化)を境に基準が異なる。図面・確認済証の有無を確認。
• 劣化の有無:土台腐朽、白蟻、柱脚の割れ、基礎のクラック(ヘア/貫通)、アンカーの錆。劣化箇所は補強前に是正。
• 壁量・偏心:耐力壁の量とX-Y方向のバランス、平面重心と剛心のズレ(偏心率)を把握。偏りはねじれの原因。
• 水平構面:2F床・小屋裏の剛性/倍率が低いと壁の効きが減る。合板増し張りで面剛性を確保。

 

2. 木造(在来/2×4):効く補強の順番
1) 基礎・柱脚の健全化:布基礎の無筋→有筋増し打ち/耐圧盤、ひび割れエポキシ注入。アンカーボルト挿入/増設、ホールダウンで柱脚引抜に抵抗。
2) 耐力壁の計画:面材耐力壁(構造用合板/OSB/ダイライト等)を開口バランスを見ながら対向配置。1階隅角と開口部周りを重点配備。
3) 水平構面(床・小屋):構造用合板12mmを根太・タル木へN釘@150/100等で留め、床倍率を上げる。小屋裏にも火打ち/合板。
4) 接合金物:筋交いプレート/羽子板/座金/短ほぞの見直し。古い釘打ちのみ→金物化で一気に強くなる。
5) 屋根軽量化:重い瓦→軽量金属/防災瓦へ。上部質量を下げると地震時の慣性力が減少し、全体の効きが上がる。
ワンポイント:壁を“増やす”よりバランス。南面だけサッシだらけで北が壁だらけ…は典型的なねじれ要因。南にも短尺壁を挿む、耐力ブレースを入れる等でX-Y均衡を取る。

 

3. 開口補強と居住性の両立
• 掃き出し窓を耐力壁化したい場合は、フレーム付き耐力サッシや鋼製枠+方杖/枠内ブレースで採光と剛性を両立。
• 吹抜けは気持ちいいが水平構面欠損。梁補強+耐力壁追加または制振ダンパー併用で対応。

 

4. RC・SRC・マンションの要点
• 共用部:外壁・梁・床スラブ・バルコニーは共用扱いが多く、管理組合の合意が必須。専有部内は間仕切/開口中心の対策。
• 耐震壁の新設(建替/大規模改修時):開口を減らして壁量増、スリットで柱梁の塑性ヒンジ位置をコントロール。
• 巻立て:柱・梁を鋼板/FRP/炭素繊維で巻く方法。靭性とせん断耐力を底上げ。居住中工事は粉塵/騒音配慮が肝。
• 住戸内制振:戸境壁や廊下側にせん断型制振ブレースを設置。専有部だけで完結しやすいのが利点。

 

5. 制震・免震という選択肢
• 制振:木造向けのオイルダンパー/粘弾性ダンパーをX型/門型で配置。補強壁量を抑えつつ揺れを半減でき、家具転倒も抑制。費用感は1邸40〜150万円(箇所/メーカーで差)。
• 免震:戸建て後付けは基礎直上に免震装置+配管伸縮など大工事。新築/大規模改修向きで数百万円〜。

 

6. 非構造部材の安全:命を守る“仕上げ側”対策
• 天井:野縁受け/ハンガーの落下防止、点検口の固定。重い照明や吊り物の補強。
• ガラス:飛散防止フィルムを掃き出し/腰窓/家具ガラスへ。
• 家具:L金物/ベルトで壁下地に固定。上下分離型収納は連結/座金で一体化。
• 開口部:引戸はレール脱落に注意。戸車点検と上枠ガイドの追加で外れにくく。

 

7. 設計フローと検査 
1) 事前調査(図面・現地・劣化) 2) 解析(簡易評点→必要に応じ時刻歴/保有水平耐力) 3) 補強計画(壁量/偏心/接合/基礎) 4) 意匠調整(開口・動線) 5) 施工(劣化是正→構造補強→仕上) 6) 検査(金物トルク・釘ピッチ・写真記録・第三者監査)。

 

8. 予算・工期の目安 ⏱️
• 木造部分補強(壁数カ所+金物):50〜150万円 / 5〜10日。
• 全面的な耐震改修(基礎一部増し打ち+壁量再編+水平構面):180〜450万円 / 2〜4週間。
• 制振ダンパー(3〜6カ所):40〜150万円 / 2〜5日。
• RCの柱・梁巻立て(住戸内):80〜250万円 / 1〜2週間(粉塵・養生次第)。

 

9. ケーススタディ
条件:1980年(旧耐震)木造2階、延床30坪。南面大開口で1階に壁が少なく、玄関・LDKの隅角部にねじれが発生。
対策:1階南面に面材耐力壁を2スパン追加、北西隅にホールダウン、2階床に12mm合板で水平構面強化。屋根は軽量金属へ葺替、階段室に制振ダンパーを1カ所。
効果:簡易評点0.4→1.0へ、計算上の層間変形角▲40%。体感の揺れも短時間で収束、食器の落下ゼロ。✨

 

10. よくある誤解と回避 ‍♀️→✅
• 誤:「筋交いを増やせばOK」→ 正:水平構面/接合/基礎が弱いと効かない。面で連続させる。
• 誤:「南面は明るさ重視で壁ゼロ」→ 正:短尺耐力壁/耐力サッシで光と剛性を両立。
• 誤:「古い基礎にそのまま増し壁」→ 正:アンカー/座金不足を先に是正。
• 誤:「制震は贅沢」→ 正:開口を潰さず揺れと家具転倒を減らせる費用対効果の高い手段。

 

11. チェックリスト ✅
☐ 劣化(白蟻・腐朽・ひび)を是正済み
☐ 壁量とX-Yバランス、ねじれの評価
☐ 水平構面(床・小屋)の剛性確保
☐ 接合金物(ホールダウン・アンカー・座金)を適正化
☐ 基礎補強の要否判断と処置
☐ 屋根軽量化の検討
☐ 非構造部材(天井・ガラス・家具)の対策
☐ 施工写真・金物トルク記録・第三者検査

 

まとめ:耐震は“点”ではなく連続する“面”と“線”の設計。基礎→柱脚→壁→床→小屋を切れ目なくつなぎ、必要に応じて制振で揺れを抑える。暮らしと意匠を壊さず、確実に効く改修を選びましょう。